誰かが売ったモノは、誰かの買いたいモノ

誰かの不用品は誰かの宝

というのは言い過ぎだとは言い得て妙だなぁと思った話。

新品、中古、子供服とか使わなくなったけど全然使えるものの、売り場として、メルカリ、ブックオフ、リサイクルショップ、ヤフオクなんかを使っている人もいるかと思う。
売っている人にとっては、当然高く買って欲しい。
買いたい人は当然安く買いたい。
その「高い」「安い」には当然基準がある。
自分で選んだ商品だったりすると原価、自分で買ったモノだったらそのものの価値(購入値段)から使用期間、劣化感を引いた価格、みたいな話になる。

そうでないこともあるんだよなーと。

子供が独り立ちして十数年経った時、母が亡くなった。
年は80歳を過ぎていた。悲しいは悲しいがそれは突然ではなく、誰にでもいつか必ず訪れる死だった。

遺品を整理していると、着物が沢山出てきた。
そういえば、母は着物が好きでよく着ていた。
それにしてもこれほど沢山あるとは思っていなかった。
自分は着物を着る機会なんてほとんどない。
旦那に相談すると、タンスの肥やしになるくらいなら、誰かに着てもらった方が良いのでは?と言う。

要は、売ったらどうか?ということだ。
形見は形見だが、確かにタンスの肥やしどころか、そのまま劣化してしまうくらいなら、着物好きな誰かに着て貰った方が母も喜ぶかもしれない。
そう思い、売ることにした。

ちゃんと大事にしてくれそうな人に届くように、着物の買取をしている呉服屋さんに売ることにした。
自分には着物の価値はわからない。
だから着物のプロにきちんと品定めして貰った方が良いと考えたのもあるが、その方が高く買って貰えるのでは、と思ったのも事実。
どうせ売るなら高く、というのもあるが、いわゆるリサイクルショップでみてもらうより、母が好きで集めた着物の価値を高くみて貰えるのではとも思った。

着物は全部で15枚。

着物の価値はわからない。
よくわからないけれど、1枚3万円くらいの価値がつけばありがたいと思っていることと、母の遺品であり、思い入れもあることを伝える。

「わかりました」

と呉服屋の旦那は品定めをし、

「そういうことなら1枚5万円で買い取らせていただきます」

と言った。

私と旦那は母の着物を予想より高く評価してくれたことに驚き、感謝した。

呉服屋の旦那のもとにある日、

母の大切な遺品で自分は着物の事はよくわからないから、大事にしてくれる人に使ってもらいたい、と夫婦がやってきた。
1枚3万円くらいで買い取ってくれたら嬉しいと。

持ってきた15枚のうちの2枚、それらをみた時、興奮した。
そんな表情を悟られないよう、平静を装うよう心がけた。

1枚5万円を提示すると、夫婦は喜んで帰っていった。

本当に喜んだのは呉服屋の旦那だった。
15枚のうち2枚は本加賀友禅。
その中でも最高級品。
最低でも80万円くらいで売れる代物だったのだ。

12月

年末、個人事業主の多い古物業界の人は、古物市場で沢山買い物をする季節だなぁと思い、いつしか聞いた話を思い出したのでした。

戯れ言古物,着物,年末

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