涙のハンドボール
まだ、関東は梅雨入りしてないというのに、涙で濡れた校舎の片隅。
3年生の引退をかけた戦いは終わってしまった。
残念ながら、届かなかった。
山場の週末
土曜日、準々決勝に勝利し、日曜日、準決勝でライバル校との対決。
前半を同点で折り返し、応援にも熱が入る両チーム。
後半、突き放される。
なかなか得点が入らない、それでも最後まで諦めず、差を縮めていった。
が、追いつくことはなかった。
後半が始まって30分後に響いた試合終了の笛は、3年生の引退を意味した。
負ければ引退、そんなことはインターハイ予選が始まった時からわかっていたはずなのに、実際に試合が終わってみると、その喪失感はなんとも大きかった。
終わってしまった。
全員、号泣。
選手も親も全員号泣。
悔しくないわけがない。後悔がないわけもないだろう。でも、最後まで諦めずにやりきった自分たちのこと、頑張ってきた年月は誇りに思ってほしい。
そうはいっても、簡単に切り替えられるほど人間単純じゃない。
保護者としてやれることは全部できただろうか?
あんなに号泣している娘は初めて見た。
ちょっと心配になるも、声もかけられない。
娘の告白
試合が終わって2時間後、選手たちが保護者に最後の挨拶をする時間。
現場に集まる選手たち。
娘が寄ってきた。
この日の試合、娘のシュートが全然入らなかった。
控えめに言って、全然入らなかった。
「なんか、すみません」
と親の自分が思うほど。
実際、3年生の親には言ってしまった。
言われた方も困るだろうに。
こんなにシュートが入らなかった娘を見るのも初めてだったのでちょっと心配だった。
「大丈夫?」と聞いた。
「何が?」
「何がって、全然シュート入んなかったからトラウマとかになってないかな?とか」
しばらく沈黙が続いた。
「ダメだ、また出てきちゃった」
照れ隠しだろう、半笑いで涙を流す娘。もう涙を拭こうともしない。
「シュート打つのが怖くなっちゃった…。こんな気持ちになったの初めて。今までも大切な試合だったよ。こんな気持ちになったの初めて。決めきれなかった。不甲斐ない。」
そんな言葉を口にする娘にかける言葉がなかなか見つからなかった。
「そういう想いをしないように、練習して自信つけるしかないんじゃない?」
と頑張って言った。泣かないように我慢するのが大変だった。
トレーナー、コーチ、監督、顧問、部長の挨拶
主力メンバーが誰かしら怪我や病気で戦線離脱することが多かったチーム。チームビルドが難しかったのは容易に想像できる。
それでも、春の選抜大会に出場、関東大会は13年連続出場を決めたのだから、選手はもちろん、トレーナー、コーチ、監督、顧問、チームを引っ張った部長の功績はすごいものがある。
涙をこらえ、なかなか一言目が出ない監督の姿に、悔しさ、さみしさ、色んな物事が象徴されていたように思う。
他の強豪校はほぼ中学からの経験者が中心となっている中で、高校からハンドボールを始める子が多いのもチームの特徴でもある。
ここぞの時にナイスキーを出すキーパー、相手が嫌がるディフェンスをするトップ、華麗にスライドしてゴールを決めるポスト、固いディフェンス、高校からハンドボールを始めたって活躍できる!という証明。
「これからも私たちのハンドボール部をよろしくお願いします」
そう締めた部長。
OG、OG保護者、OB、伝統を受け継いで、ずっと応援してくれる、すっとサポートしてくれる、そんな人が増えていくこの高校でハンドボールができて良かったなと思う。
終わりは新しいい始まりでもある。
新チームも頑張れ!