#noteでよかったこと

2022/11/01

僕には秘密があった。
秘密と言ったら大袈裟かもしれないが、僕にはクラスのみんなになんとなく隠していることがあった。
人類みんなクリエイター、みんな発信者、そんな風に言われている時代。
YouTubeクリエイター、TikTokクリエイター、インスタグラマーなどなどなど。
僕の学校も例外ではなく、男子はYouTube、TikTokでワチャワチャやってオモシロ動画みたいなのをUP、休み時間は次の動画はどうする?なんて話をしているし、女子はアレがカワイイ、これがカワイイなど楽しそうに話をし、TikTokの振り付けを練習していたりする。
僕にはその光景が眩しい。
楽しそう、仲間に入りたい、と思いつつ、オモシロ動画のアイデアを出す自信もないし、動画に出るというのも恥ずかし過ぎて無理。
相当数の再生数、いいね数を叩き出すクラスメイトもいる。
もちろん、クラスの人気者だ。いや、世界の?? 少なくとも日本の人気者と言えるのかもしれない。
眩しい、眩しすぎる。

僕には小さな頃から日記を書く習慣があった。高校生の今でも何となく続いている。
その日にあった出来事を主に書き記していたが、中学生くらいから、クラスメイトの生態みたいなものを書くようになった。
みんながYouTubeやTikTokで盛り上がっている頃、僕はnoteに出会った。
YouTubeやTikTokは無理だけど、noteなら僕にもできるんじゃないか? と思ってはじめてみた。
もちろん、僕がやってるとバレないように、noteに表示される名前は実名ではなく「ミルクジャムデニッシュ」にした。単純に学校で売ってるパンの「ミルクジャムデニッシュ」が好きだったから。
「自分のクリエイターページを表示」というボタンがある。
僕もクリエイターになった気分だ。
クラスメイトの生態みたいなものを書いた。
個人が特定されないように、あたかも”全国の高校生の間で○○が流行っている”というような内容に解釈できるようにした。
「スキ」された時は単純に嬉しかった。
そう、僕の秘密はnoteをやっていること。

休み時間が楽しくなった。
クラスメイトを観察してると、YouTubeでのトレンド、TikTokでのトレンドも分かるようになり、そんなことをnoteに書いていると、「スキ」される数もちょっとだけ増えた。
特に役に立ったのは、クラスのアイドルでTikTokでも有名人の小林さんの存在だった。
小林さんが振り付けの練習をしているのを見ているとTikToKでのトレンドがわかった。

ある日の昼休み、小林さんが僕に話しかけてきた。
クラスのアイドル、眩しい光景の中の人が僕に話かけるなんて未だかつてないことだった。

「この"ミルクジャムデニッシュ"ってアンタでしょ」

noteの僕のクリエーターページを見せながら、小声で尋ねられた。
急な出来事で何の反応もできなかった。

「なかなかいいと思うよ。どうせ隠してるんでしょ?秘密にしといてあげる」

そう言って「スキ」を押すと、小林さんはキラキラした友人たちの方に戻って行った。
僕は手に持っていたミルクジャムデニッシュをかじった。

この日から、僕の秘密は、僕と小林さんの秘密になった。

#noteでよかったこと

戯れ言note

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