推し活の再開-ハンドボールな春-

トイレの位置もわからない。
初めて訪れる高校のグラウンド。

ボールを追い必死の攻防を繰り返す選手たち、
笛の音、練習している男子の野太い声が響き、
応援コールがそこかしこから聞こえ、土埃が舞う。

初めて訪れたとはいえ、そこには見慣れた風景が広がっている。

中学部活を卒業し、受験勉強、そして怪我発覚。
高校は希望通り受かるも、発覚した怪我で動けず。絶対安静。

ハンドボールは相手の正面から上半身なら押しても、抱きついてもルール上OK。
結構激しいコンタクトスポーツ。

いつハンドボールができるのだろう?
本当にハンドボールができるのだろうか?

そんな不安を抱えつつ、別な病院で診てもらうと、本当かどうかわからないが動いても大丈夫、というこちらの都合の良い診断結果に。
とはいえ、徐々に動かしていきましょうと。
そんな状況を知っていて、

「ちょっとずつ練習させますから!」

と言っていたコーチが、しばらくして練習を見学しにいくと、

「もうやらせてますから!怪我で休んでいるエースの復帰が遅れてるので、ちょっとずつなんて言ってられない!」

と前言撤回。
大丈夫か?と思いつつも、本人は大丈夫そうで楽しそうなので良し。
どうせ、私はすべり症、それでも今のところ大丈夫だし。

試合が近づき、先輩が続々と怪我。。。
繰り上げで試合に出るかもしれないと、練習もハードに。

迎えた試合当日。
中学時代の、U15の、先輩のお父さん、お母さんに会う。
ご無沙汰してます的な挨拶はそこそこに、

「また試合会場で会えるのは嬉しいですね」

と、確認しあう。
中学時代は絶対的な仲間であったが、高校に入ると敵同士になるかもしれない関係、男子はお互い関係がないチーム。
でも、子供らがハンドボールをやっていることで試合会場で会える、一緒に応援する、たまに敵同士になる、そんな関係がなんだか嬉しいのである。

「これが私の推し活ですから。楽しい推し活がはじまりましたよ」

と嬉しそうに言った男子のお父さん。
そう、楽しい推し活がはじまったのだ。

先輩が点差をつけてくれたおかげで途中出場した初戦後半。
先輩から受けたパスをそのままロングシュート。
高校生初ゴールが決まった。